2016年1月28日木曜日

1月7日公開セミナーのご報告(3)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。 

17()に行われた公開セミナーのご報告、その3です。 

今日は理学部海洋自然科学科の本郷宙軌研究員の発表を紹介いたします。

「サンゴが造る防波堤の現在と将来:琉球弧にみられる特徴と気候変動による影響」というテーマで発表をされました。 

サンゴ礁は天然の防波堤であり、外洋からの波高を礁嶺(サンゴ礁の外洋側の盛り上がった場所)9割ほど減少させますが、高水温や海面上昇、堆積物の流入、工事など、自然と人為的な影響によって造礁サンゴを含むいろいろな生物に影響を与えており、現在では防波堤の形成が衰退の危機にあります。 

 また、琉球弧は世界で最も台風の影響を受ける地域なので、サンゴ礁の防波堤がとくに重要です。琉球弧の特徴は場所によって礁嶺の隆起量が違うことのようです。それに伴い波高減衰率も変わるそうです。そのため、隆起量の大きい島では防波堤の機能が高いようですが,隆起量の小さい島では海面上昇などの影響を受けやすいようです. 

過去のデータではサンゴ礁は100年で0.6m上方に形成されていますが、現在のCOの排出をそのまま続けていくと、今世紀末には海面が最大で約1m上昇するといわれています。現在のサンゴ礁防波堤機能を維持するためには,海面上昇1m分からサンゴ礁の成長分0.6mを引いた0.4m分を埋めるために礁嶺部でのサンゴ礁の移植や、砂・礫など堆積物の供給が必要のようです。しかし,その方法についてはまだ確立されていないので研究が必要である、ということでした。
 

今回で公開セミナーのご報告は最後になります。
 お読みいただきありがとうございました。

 

2016年1月20日水曜日

1月7日公開セミナーのご報告(2)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。 

17()に行われた公開セミナーのご報告、その2です。 

今日は理学部物質地球科学科の浅海竜司先生の発表を紹介いたします。
 

「サンゴの化石による古環境復元」というテーマで発表をされました。 

サンゴは熱帯・亜熱帯の海の情報を保存しており、過去の海の環境を復元する試料として重要です。塊状のハマサンゴは数百年生き、1年に1cmの年輪構造が形成され、骨には微量な放射性炭素(14C)やウラン/トリウム(U/Th)が入っており、それらの年代決定で正確な生息年代が決定できます。また、骨格の中には様々な化学成分が入っており、それを調べることでいろいろな環境要素の時間変化がわかります。 

沖縄本島南西部の那覇若狭地区から得られたハマサンゴ群体化石の解析によると、それは完新世(1万年前~現在)中期の約53年間成長したサンゴの化石であることがわかった.δ18O(酸素同位体)とδ13C(炭素同位体)の季節分解能の時系列データ(2カ月平均)を抽出したところ、δ18O、δ13Cともに明瞭な季節変化を示し、準2年変動、数年スケール変動、十数年スケール変動が完新世中期に沖縄の海の水温変化に存在していたことが分かった、といった内容でした。
 

次回は理学部本郷研究員の発表を紹介いたします。
 

2016年1月12日火曜日

1月7日公開セミナーのご報告(1)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。
今日は先週行われた公開セミナーのご報告です。
 
17()に公開セミナーが行われました。
当日は15名近くの聴講者にご参加いただけました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。 

さて、今日は理学部物質地球科学科の新城竜一先生の発表を紹介いたします。
 
「レーザー分析ありんくりん」というテーマで発表をされました。 

  2つの分析についての発表でした.
  最初に「ジルコンのU-Pb年代測定」について。 
  ジルコンが結晶化する時には鉛(Pb)はほとんど含まれず,ウラン(U)は多く含まれるそうです。そこで,現在測定される2つの鉛同位体(206Pb207Pb)はウラン(238U235U)がそれぞれ放射壊変してできたものなので,2つのPb同位体の存在量から年代測定ができるそうです。またジルコンは風化・変質に強く,できた時の年代がリセットされにくいため,中心部から周縁部にかけて,数十億年~数百万年前までの幅広い年代を保持していることもあるそうです。
分離したジルコン粒子に,数十μmに絞ったレーザー光を照射し生成されたエアロゾルをICP-MSに導入して元素の濃度や同位体比を分析するとのことでした。 

次に「メルト・インクルージョン」をレーザーICP-MSで分析した論文の紹介をされました。ハワイ島マウナ・ロアの軽石丘に含まれるかんらん石斑晶(1mm)の中のメルト・インクルージョン(直径約0.2mm)は、かんらん石斑晶が結晶化するとき周りにあったマグマを取り込んだマグマの液が固まったものであり、マグマが出来てすぐの情報が記録されているそうです。
 このメルト・インクルージョンの微量元素濃度やSr,Pb同位体比をレーザーICP-MSで分析した結果、25.5億年前に表層で海水を含む変質を受けた海洋地殻が地球の深部(2,900)まで運ばれ,マントル・プルームの成分として再び表層へ上がってきたことが分かったとのことでした。

 
次回は理学部浅海先生の発表を紹介いたします。