2015年12月28日月曜日

12月10日公開セミナーのご報告(3)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。 

1210()に行われた公開セミナーのご報告、その3です。 

今日は教育学部地質学の馬場壮太郎先生の発表を紹介いたします。
 

Laser-ICP-MSを用いた変性鉱物のREE分析」というテーマで発表をされました。 

調査対象の南極に分布する露岩は約5〜6億年前の造山運動を受けた岩石で、その際形成された山脈の深部が見えているものであるそうです。

昭和基地から離れた僻地3ヶ所で採取した岩石の温度圧力経路(ある岩石が経験した温度・圧力の変化)を算出し、ジルコンの年代測定をやると、沿岸と内陸側では違う値を示すことから、それぞれの場所の変成作用・変形作用の時代が全く違うということがわかりました。 

また、片麻岩の部分溶融(溶解)(ある温度以上になると岩石が溶ける現象)がどのような温度条件で形成されたかを3つの方法で検討した結果、9001,000℃の条件が得られ部分溶融が進行したことを確認した。この際に形成したメルト(マグマ)と既存の鉱物が反応することにより様々な変成組織が確認され,コロナ状のザクロ石の希土類元素分析を行うとHREEに枯渇したパターンを示し,班状変晶のそれとは異なっていたことが報告されました。

これらのことから変成組織の相違に対応して異なるレアアースパターンが出現するということがわかり、沖縄の砂岩に含まれる砕屑性ザクロ石にそれを応用すると、砕屑物の由来や、供給源の予測が可能になるかもしれない、といった内容でした。 

次回の公開セミナーは来年17()にあります。
お時間のある方はぜひお越しください。
 
 

2015年12月24日木曜日

プロジェクト 公開セミナーのご案内

来年1/7(木)にプロジェクトメンバーによる公開セミナーを開催します。

ご興味のある方どなたでもお気軽にご来聴下さい。

日時:1月7日(木) 16:30~18:00

場所:理学部複合棟2階202教室



2015年12月21日月曜日

12月10日公開セミナーのご報告(2)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。
 
1210()に行われた公開セミナーのご報告、その2です。

今日は理学部物質地球科学科の藤田和彦先生の発表を紹介いたします。
 
「マイクロビアライト:微生物が造った石灰岩」というテーマで発表をされました。
 
 マイクロビアライトとは、鉱物の沈殿を誘導する底生微生物群集によって造られた堆積物で、ストロマトライト(葉理をもつ堆積物)とストロンボライト(葉理をもたない堆積物)があります。

 後氷期(寒い氷河期が終わってから暖かな間氷期へ移り変わる時代)のサンゴ礁域の地層を造る重要な化石で炭酸カルシウムからできており、炭素・酸素の同位体で測った結果では無機的沈殿物であること、また、放射性炭素年代測定によりサンゴの死後数百年で形成されたことがわかりました。有機物も少し含まれており、硫酸還元菌の証拠が検出されたそうです。 

 形成過程などまだわかっていないことも多いので、那覇新港で発見された試料を基に異分野融合をやってみたい、といった内容でした。 

次回は教育学部馬場先生の発表を紹介いたします。
 
 

2015年12月16日水曜日

12月10日公開セミナーのご報告(1)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。
 
今日は先週行われた公開セミナーのご報告です。 

1210()に公開セミナーが行われました。
当日は15名近くの聴講者にご参加いただけました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。 

さて、今日は農学部地域農業工学科の安元純先生の発表を紹介いたします。
 

「琉球石灰岩帯水層における地下水の水質形成機構」というテーマで発表をされました。
 
 琉球石灰岩帯水層は沖縄本島中南部に分布しており、大きな空洞・空隙が多く、そこに生活排水や家畜の廃棄物、地下ダムを利用した農地などから窒素等を含んだ水が溜まっており、一部では脱窒反応が起こっています。 

 脱窒反応には「従属栄養型脱窒反応」と独立栄養型脱窒反応」があり、安定同位体トレーサー法を利用するとどちらの反応かが判別できるということで、糸満市米須エリアの調査結果を中心に発表されていました。 

また、微生物の遺伝子を解析するPCR-DGGEReal Time-PCRという手法を使って地下水中にどういう微生物層がいるのか、またその遺伝子量を計量し、安定同位体の結果と比べた調査結果を発表されました。 

今後は、室内カラム試験等を通して遺伝子の定量と同位体比との関係を見ていきたい、とのことです。
 

次回は理学部藤田先生の発表を紹介いたします。
 

2015年12月8日火曜日

11月22日シンポジウムのご報告(3)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。 

今日は、1122()に行われたシンポジウム後半4名の先生方の研究発表についてご報告いたします。
 

1人目に教育学部の馬場先生が「沖縄島先新第三系基盤岩の生い立ちを探る」と題して、沖縄島周辺に分布する5つの地質体を構成する砂岩や塩基性岩の全岩化学組成の特徴について紹介し、砂岩に含まれる砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定を行い、各地質体の堆積年代を解析中であることが発表されました。
 

  2人目に理学部の新城先生が「海底調査と岩石化学組成から琉球弧のマグマ活動を探る」と題して、プレート沈み込み帯でのマグマの生成過程の説明や、海底調査で採取した岩石の化学組成から琉球弧の最西端では沈み込むプレートが断裂してマグマ活動に影響している点などを発表されました。
 

 3人目に農学部の安元先生が「琉球石灰岩中の地下水から海と陸との繋がりを探る」と題して、海底湧水の調査結果や、サンゴのポリプを用いた生物活性試験より、陸地の地下水から海へ流れてきた栄養塩に含まれるリンがサンゴの石灰化を阻害しているのではないかという仮説を発表されました。
 

 4人目に理学部の土岐先生が「海底熱水から鉱床資源を探る」と題して、沖縄トラフには有用な金属を含む海底熱水鉱床が約10ヶ所見つかっていることや、今後海底熱水中における化学反応を解明し、海底熱水鉱床の成長モデルを作って鉱床のありかを予測したい、との発表をされました。 
 

まだ各分野がばらばらの状況ですが、これから異分野融合を進めていって成果が出た時点でまたこのような発表の場を設けたいと思っております。また、公開セミナーもあと2回ありますので、ご興味のある方はぜひお越しください。

2015年12月4日金曜日

プロジェクト 公開セミナーのご案内

来週プロジェクトメンバーによる公開セミナーを開催します。

ご興味のある方どなたでもお気軽にご来聴下さい。

日時:12月10日(木) 16:30~18:00

場所:理学部複合棟2階202教室


2015年12月2日水曜日

11月22日シンポジウムのご報告(2)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。 

今日は、1122()に行われたシンポジウム前半4名の先生方の研究発表についてご報告いたします。
 

1人目に理学部の藤田先生が「琉球石灰岩から古環境を探る」と題して、港川石灰岩を例に挙げ、それに含まれる有孔虫の化石や土壌の地層から、隆起と沈降により形成された地形である旨を解説されました。今後、異分野融合研究により島の沿岸域の環境変遷を明らかにしたい、とのことです。 
 

2人目に農学部の金城先生が「南西諸島の土壌を探る」と題して、土壌の定義や成り立ちの説明と、生態系サービスや土壌のレッドデータに石垣島のカラ岳が含まれていること、また人為的要因による赤土流出などから土壌保全への問題提起をされていました。 
 

 3人目に教育学部の尾方先生が「カルスト景観の多様性を探る」と題して、琉球弧を含めたアジアにみられる円錐カルストについて、地形形成営力と化学的風化を主体とする研究に加えて、地形構成物質と物理的風化に関する調査・解析も必要である、との発表をされました。 
 

 4人目に理学部の浅海先生が「サンゴの骨から琉球の自然史を探る」と題して、いくつか研究例を挙げながら、サンゴの骨に含まれる元素によって海の変遷が分かるため、サンゴの骨が過去の地球環境を伝える試料であることを発表されました。
 

 次回は後半4名の先生方の研究発表についてご紹介いたします。

 

2015年11月25日水曜日

11月22日シンポジウムのご報告(1)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。 

1122()に沖縄県立博物館・美術館 博物館講座室にて、シンポジウム「琉球弧の島嶼地球環境を探る」を行いました。
 

 
当日は50名近くの聴講者にご参加いただけました。
ご参加いただいた皆様、お忙しい中お越しいただきありがとうございました。 

 この日は、プロジェクト代表者の藤田先生より、ご挨拶とプロジェクトの概要説明があり、その後、プロジェクトメンバー8名それぞれの研究発表を行いました。

 最後のまとめでは藤田先生より、このプロジェクトでいろいろな琉球弧の地球科学的な研究から元素や水の循環で繋がりを持たせて異分野融合研究ができるのではないかと考えている、というお話がありました。 

また、参加者の方より、「それぞれの研究の時間や空間スケールが多岐にわたるので、それを根的に新しい学問を考えてみてはどうか」「生物などの生態系も含めて総合的に研究してはどうか」といった貴重なご意見をいただくことができました。 

 次回は研究発表の内容についてご紹介いたします。

2015年11月20日金曜日

11月5日公開セミナーのご報告(3)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。 

先週行われた公開セミナーのご報告、その3です。

 今日は理学部海洋自然科学科の土岐知弘先生の発表を紹介いたします。
 

                                 
B-Li-Sr同位体比を用いた海底熱水循環の描画」というテーマで発表をされました。
  B(ホウ素)、Li(リチウム)、Sr(ストロンチウム) 

海底熱水系とは海底で約300度の温泉(熱水)が噴き出す場所で、その熱水には重金属が溶け込んでおり、噴き出した場所には海底熱水鉱床というものができています。その鉱床を作り出す熱水中のホウ素・リチウム・ストロンチウムのお話でした。 
 
それらの物質は玄武岩よりも堆積物に多く含まれており、同位体比という指紋のようなもので、熱水がどちらと反応したのかがわかるのだそうです。 

沖縄トラフ(沖縄から見て中国側の水深2,000mの海底)には10点ほどの海底熱水系がありますが、海底資源である熱水鉱床を探し出すために海底熱水のプロセスを調べて、鉱床成長モデルを構築したい、といった内容でした。 

次回の公開セミナーは1210()にあります。
詳細については、後日お知らせいたします。

2015年11月17日火曜日

11月5日公開セミナーのご報告(2)


皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。
 
先週行われた公開セミナーのご報告、その2です。
 
今日は教育学部自然地理学の尾方隆幸先生の発表を紹介いたします。
 
 

                                
「日本のジオパークからみた地球科学」というテーマで発表をされました。

ジオとは地球科学のことを指しており、ジオパークとは地球科学的な遺産を、生態系や人々の暮らしまでを含めて、ストーリーで繋げて考え楽しめる場所のことを言います。

この研究では、ジオパークのテーマを、宇宙惑星科学、大気水圏科学、地球人間圏科学、固体地球科学、地球生命科学の5つに分類・解析していました。

この5分類をバランスよく含めてジオストーリー(ジオパークでジオツアーをする際に必要となるストーリー)を作るのが理想なのですが、日本のジオパークでは、固体地球科学(主に地質)と地球人間圏科学(主に地理)、特に食べ物など人間がらみのテーマが多くの割合を占めており、ジオストーリーとは言い難いものが多いことが問題点だそうです。

地表の景観は、地質だけではなく、雨風など大気水圏の現象との組み合わせで決まるので、地理学的なテーマと地質学的なテーマをうまく繋げるためにも、大気水圏のテーマをもっと入れてトータルで地球科学の話を入れるのが必要である、といった内容でした。


次回は理学部土岐先生の発表を紹介いたします。

 

2015年11月12日木曜日

11月5日公開セミナーのご報告(1)



皆さま、こんにちは。
プロジェクト事務補佐員の久志です。
今日は先週行われた公開セミナーのご報告です。 

115()に公開セミナーが行われました。
 
 
当日は10名余りの聴講者にご参加いただけました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
 

この日は第1回目でしたので、プロジェクトの代表者である藤田先生から公開セミナーの目的について説明がありました。
 
 この公開セミナーでは、プロジェクトメンバー9名が3名ずつ交代で、それぞれの研究の紹介や今後やっていきたい共同研究の提案をしていく予定です。 

今月から毎月第1木曜日、計3回に渡って開催いたしますので、お時間のある方、ぜひご参加ください。
 

さて、今日は農学部土壌学研究室の金城和俊先生の発表をご紹介いたします。
 

「土壌中のカルシウムについて」というテーマで発表をされました。

土壌中のカルシウムは植物が生きていくうえで大事な物質ですが、沖縄の土壌は石灰質で本州の土壌とは異なるため、農林水産部が推奨する施肥(農作物に適した量の肥料を与えること)量を基に化学肥料を与えると、カルシウムの量が多すぎて植物が育たなくなるそうです。

そのため現在は、今までの経験に基づく感で肥料を与えていますが、土壌中にあるカルシウムが植物によりどのくらい利用されるのかまだ算出が難しいため、石灰質の土壌に適した施肥量の計算方法を見つけたい、といった内容でした。
 

次回は教育学部尾方先生の発表を紹介いたします。

2015年11月6日金曜日

プロジェクト シンポジウムのご案内

11月22(日)にプロジェクトメンバーによるシンポジウムを開催いたします。

地球環境や環境科学を研究している教員が、それぞれの研究分野からみた琉球弧の面白さや最新の研究成果を分かりやすく紹介します。

一般の方向けの内容になりますので、お気軽にご参加ください。

日時:11月22日(日) 13:30~16:40

場所:沖縄県立博物館・美術館 1階 博物館講座室

 


2015年10月29日木曜日

プロジェクト 公開セミナーのご案内

来週プロジェクトメンバーによる公開セミナーを開催します。

ご興味のある方どなたでもお気軽にご来聴下さい。

日時:11月5日(木) 16:20~18:00

場所:亜熱帯島嶼科学拠点研究棟3階セミナ-室(北食堂の隣の建物)


2015年10月7日水曜日

南部巡検

農学部 金城和俊です。
今年度の中期計画達成プロジェクトのメンバーで、沖縄本島南部で巡検を行いました。
巡検を行ったのは、9月7 日に行いました(巡検後、1ヶ月程経過して申し訳ございません)。
それについて、報告したいと思います。




朝、9時に大学を出発して向かった先は、安座真港でした。

安座真港から陸側の崖を観察しました。
下部には島尻層群泥岩、上部には知念層が観察できました。

次に、港から海沿いにバスで「テダ御川」に向かい、
下部には島尻層群泥岩、上部には知念層が観察できました。

次に向かったのは、斎場御嶽(の入り口近く)。
この場所でも、島尻層群泥岩と知念層が観察できました。
小高い丘になっており、とても観察しやすい場所です。
泥岩と知念層の境が明瞭でした。

次に向かったのは、垣花樋川です。
ここは個人的に、とても印象的な場所でした。


この場所は、湧き水が出ており、その場所が小さな滝のように水が流れていました。
その流れに沿って、岩にコケが生えていて、その岩石は溶け出してきた石灰岩が不思議な形状で固結した様子が観察できます。
それはトゥーファー(Tufa)と呼ばれるそうです。

次にむかったのは、奥武島です。
そこで、まず目に入ったのが、甌穴(ホットポール)です。

こんなに入り組んだ状態で甌穴が存在するのに驚きました。
甌穴ができる要因が川と礫の存在だと考えられますが、現在の状態から川の存在が全く想像ができません。

奥武島の対岸に向かい、石灰岩を観察しました。
この場所は、理学部の藤田先生が研究サイトとして使用している場所です。
石灰岩の隙間に茶褐色の物がありますが、先生曰く「古土壌」ではないかと。
この色は土壌の鉄が酸化した色ではないかと思われます。
またこの部分に何故、土壌が入り込んだのか?陸化したのか?流出された土壌が再堆積?
今後の先生の研究の成果に注目です。


お昼を挟んで、具志頭海岸に向かいました。


海岸線にいくつかのノッチが観察できます。
ノッチを見てると長年の波の影響がとてつもなく激しいことがわかります。
また、この場所では海岸線に隆起によってできたノッチがあるそうで、そのノッチから3回隆起してできたのではないかと考えられているそうです。

最後に向かったのは、米須海岸と米須ダムです。
米須ダムから越流した水を放水している場所を見学に行きました。
理学部の新城先生は、ひょいひょいと奥まで行きます。
負けじとついて行きますと、
これまた素晴らしい光景です。
ここでもトゥーファー(Tufa)らしきものが観察できます。


米須ダムは地下ダムとしてとても有名です。
ちょうど止水する所を見学できます。
地下ダムは文字通り地下に貯水するダムを指します。
不透層である泥岩の上部に多孔質な石灰岩で貯水するという、なんとも画期的アイデアです。
農学部の安元先生がその付近で湧水や地下ダムの水について研究をされています。

沖縄の地質について、とても勉強になった南部巡検でした。
土壌を研究していて、常に地質のことが気になっていましたので、今回はとても有意義な時間を過ごすことができました。

またこのような巡検を藤田先生と企画していきたいと思います。
今年度は無理でも来年度とか企画したいです。




2015年8月14日金曜日

キックオフワークショップ報告

理学部の藤田です。今年度の中期計画達成プロジェクト経費に採択されました「異分野融合による琉球弧の島嶼地球環境科学」の公開キックオフワークショップを8月4日(火)に開催しましたので、その報告をしたいと思います。


まずは、プロジェクトの実施責任者である私、藤田がプロジェクトの概要について説明しました。

約200万年前以降に沖縄トラフと呼ばれる凹地が形成されて大陸から隔てられた琉球弧は、地球科学的に非常にユニークな場所として注目されています。本プロジェクトでは、島嶼・海洋・地球環境科学にとってユニークな“Natural Laboratory”である琉球弧の地球環境科学の未知の領域に対して、地球資源の成因、島嶼海洋環境の時空間変遷、島嶼と海洋環境と人間活動とのリンケージなどの統合的な研究テーマについて、その解明に迫ります。そして、得られた研究成果を学内外へ情報発信し、ジオパーク候補地の選定・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の次期報告・琉球弧の世界自然遺産登録への基礎データや、地球資源・農業資源の保全・活用に貢献することを目指します。プロジェクトのメンバーは、理学部から新城教授、浅海准教授、土岐准教授、本郷博士研究員、教育学部からは馬場教授、尾方准教授、農学部からは金城准教授、安元助教の計9名です。

次に、各メンバーの研究紹介をしました。


まずは私が「微化石からみた琉球サンゴ海の古環境変動」について紹介しました。有孔虫化石を用いた古環境解析方法と、今後共同研究で進めていきたい琉球石灰岩の時空間的変遷について研究提案をしました。



2人目に理学部の浅海さんが「サンゴと鍾乳石から琉球の長期環境変動を読む」というタイトルで、浅海さんが琉球大に赴任してから進めてきたサンゴ骨格と鍾乳石の高分解能同位体解析から明らかになった琉球弧の古気候・古海洋変動について最新の研究成果を紹介してくれました。


3人目に、教育学部の尾方さんが「カルスト研究における「気候制約説」の再検討」について発表しました。琉球弧を含む熱帯~亜熱帯域の石灰岩のカルスト地形形成には化学的風化作用だけでなく物理的風化作用も重要であるという仮説に基づき、東南アジアを含む最新の調査研究成果を紹介してくれました。


4人目に、農学部の安元さんが「リン酸塩はサンゴ礁にとって脅威か?」について、沖縄本島南部で調査している石灰岩地帯の地下水流動とサンゴ礁への栄養塩供給とその影響について紹介してくれました。


5人目に、理学部の本郷さんが「琉球列島におけるサンゴ礁と土砂流出影響のリンケージ」というタイトルで、人間活動にともなう土砂(赤土)流出とサンゴ礁への影響について、過去・現在・未来の視点からの研究成果と共同研究提案がありました。


休憩を挟んで、6人目に農学部の金城さんから「マングローブ林内の炭素の循環・役割」というタイトルで、マングローブ土壌由来の溶存有機物が沿岸環境のプランクトンの増殖に関係している可能性について興味深い研究成果を紹介してくれました。


7人目に理学部の新城さんが「ホウ素同位体の地球化学と分析手法の開発」というタイトルで、理学部に導入された最先端質量分析装置を用いて、これまで分析が難しかったホウ素同位体の分析手法と研究意義について紹介してくれました。


8人目に教育学部の馬場さんから「島嶼基盤岩に含まれる砕屑性ジルコンのU-Pb年代と起源」について紹介がありました。沖縄本島北部の嘉陽層や名護層の分布や形成場について微量元素組成に基づいて明らかにした研究成果を紹介してくれました。


最後の9人目に理学部の土岐さんが「琉球弧周辺における深部流体起源物質の分布」というタイトルで、さまざまな同位体を用いた地下流体物の起源と反応過程について、沖縄トラフだけでなく、琉球弧の様々な場所での研究例を紹介してくれました。


メンバーの研究紹介の後にディスカッションの時間を設け、今後の学内共同研究について話し合いました。先端分析機器や同位体測定技術を駆使して、琉球島嶼の石灰岩地域の物質循環について共同研究ができそうな可能性を感じました。

メンバーの中には、お互い名前(と顔)だけ知っていたけれども、どんな研究をしているのか分かっていなかった方や、これまで一緒にやりたいと思っていたけれども機会がなかった方などが集まっています。正直言いますと、同じ学内にいて、同じ地球環境科学関連の研究をしていたにもかかわらず、お互いの研究内容を十分に把握していたとは言えません。今回のプロジェクトではそのような学内教員の連携を図る良い機会にしていきたいと考えています。今後も今回のような対話を継続し、「琉球弧の島嶼地球環境科学」に関する学内共同研究を進めていきたいと考えています。

今回のワークショップは残念ながら我々メンバー以外の参加者が少なかったのですが、ぜひメンバー以外にも興味・関心のある学内教員・大学院生・学生にも参加してもらいたいと考えています。興味のある方はお気軽に我々に声をかけて下さい。